争いが運命というなら恋に落ちたのも運命なのに

「現在時刻は二〇時五十一分です。

 第八五三〇次実験開始まであと八分三二秒ですので、指定ポイントへの移動をお願いします」

街頭の光すら差し込まない路地裏の暗闇に包まれた空間。その声は静かに響く。

「二一時〇〇分になりました。これより第八五三〇次実験を開始します」

静寂が、幕を開けた。勢いをつけて繰り出される攻撃の数々。回避するのが精一杯という状況だ。誰が見ても茶髪の少女が不利ということは一目瞭然。だが、少女も黙って殺される訳にもいかず必死の抵抗を見せようと持参していた銃器で迎え撃つ。その時確かに標準は白い少年に向けた筈なのに、何故か少女は傷を負っていた。少女自身も何が起こったのか分からないかのように傷を数回見ている。しかし、それを理解するまでの時間を与えてくれるほどその少年は気長では無かった。

「オイオイ、今回のヤツは何にもしゃべンねェなァ!」

「…」

「スマしたツラしてンじゃねェ…よッ!」

地面に置いてあった鉄材を蹴り、少女の腹部に中てる。一瞬、息が止まる。それと共に込み上げる強烈な吐き気。思わず吐血してしまった少女は苦しそうに咳込んでいる。

「ンだァ?その反抗的な目はよォ…なンか言いたいことでもあるンですかァ!?」

「…ミサカは、」

少女が言葉を発したことに対し少年は目を見開く。その続きを促すかのように一瞬、攻撃が止む。その瞬間目の前の少女はパンッという乾いた銃声音と共に地面に倒れ込む。白い少年は驚いたように、銃を持った、つい先程まで殺し合いをしていた人物と残酷なまでに酷似したもう一人の少女を見つめる。

「おーおー、やってくれンじゃン。実験はどうするンだよ」

「ミサカ八五三〇号は欠陥が生じたため抹殺しました、

 とミサカは同胞を殺してしまった多少の罪悪感を心の隅で感じながらも冷静に応えます」

「欠陥…?」

「ドーパミンが大量発生し脳が冷静な判断を下せなくなる大変危険な病気だと聞いてます」

薄暗い高架下。

白い少年と二人の少女。

満月は憎たらしい程に美しく、泣きたくなるほど優しかった。

争いが運命というなら恋に落ちたのも運命なのに

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