真っ黒な世界に真っ白なあなたと私

私が恋したのは真っ白な悪魔でした。

月光が差し込む廃墟。そこに少女は寝そべっていた。少女は病気を患っているかのような白い肌をしていた。白色の髪の毛に葡萄色の瞳。

少女はアルビノだった。先天性色素欠乏症。それがこの世に生まれ落ちた瞬間から少女に課せられた運命。そんな少女を疎ましく思ったのか両親はいない。置き去り―チャイルドエラー―今やそこまで珍しいという訳でもない。ただ、少女は孤独だった。この生まれ持った性質の所為で友と呼べる人物が出来た例は無い。もちろん恋人も同様に。

そんなある時、少女は出会ったのだ。真っ白な髪に血の様な赤い瞳を持つ彼に。少年――当時は性別すらもあまり分からなかった――はコンビニに缶珈琲を買いに来ていた。少女は同類だと喜び、人見知りだったが勇気を出して話しかけた。すると少年はとても驚いたような顔をしていた。少女はそれを自分がアルビノだから驚いたんだと誤解していたが、少年から見ればただの命知らずだった。

「ねえ、あなたも私と同じなんだよね?」

「あ?同じ…って、俺もオマエみたいにアルビノかってことか?」

「え、そうじゃないの?髪も白髪だし、瞳なんか私よりもメラニンが無くて真っ赤じゃない」

「ちげェよ。俺は…」

説明しようとして少年は気づいた。この少女は自分の事を知らない。だからこんな風に話しかけてくるんだ。もし、この少女が自分の正体を知ってしまったら?逃げるのだろうか、泣くのだろうか。

少年の気持ちは矛盾していた。避けられたくない訳では無い。避けられるのには慣れている。しかし、何故だか自分の説明をする事に抵抗を感じた。

ハッ、なンだっていうんだよ…今更、

「このガキに嫌われたくないってかァ?」

「?どうしたの」

「いや、なンでもねェよ」

「ねえ、じゃあさっきの質問はいいからさ、あなたの名前を教えてよ」

少年は苛立たしく感じていた。次から次へと身の内の分かるような質問ばかりを投げかけてくる少女に。何故だか答えるのを躊躇っている自分に。

「まずは自分から名乗りましょうって習いませンでしたかァ?」

「え、わ、私は名前です」

「へーそうなンですかァー」

「ちょっと!あなたも答えてよ」

「俺かァ?俺ァ太郎ってんだ」

「…嘘だぁー」

「嘘っていう証拠は無いだろォが」

「えええー今時太郎って…」

少女は疑いながらも、本当にそうなのかもしれないと思い始めた。実際嘘という証拠は無い訳だし、本当にそうならあまり言うのは失礼に当たる。

「ええー…うん、でも太郎か…珍しいね」

「馬ァ鹿」

突然の暴言に驚いたが、少年が薄く笑っているのに気づき、文句を言うのを止めた。今まで無愛想だった少年が少なからず表情を出してくれて嬉しかったのである。

「ふふっ」

「あ?どうしたンですかァ、気持ちわりィ」

少年は耳を少し赤らめ、馬鹿にしたような視線を此方に向けた。それに気づき、少女はそれに対して更に笑った。二人は心の中に温かいものを感じていた。

真っ黒な世界に真っ白なあなたと私