助けて。
そう、警告は鳴り響いたまま。
—
今日もあの人は女を連れ込んでいた。
私は帝督の彼女である。なのに帝督の女遊びときたらもう最悪だ。土日の休日のどちらかには必ず女を部屋に連れ込んでいる。一番最初のころは大泣きしたが流石に毎日のように聞こえると涙は流れなくなっていた。因みに私は帝督の隣の部屋に住んでいる。最初同居の話が出た時に、帝督が断固拒否して隣で妥協したことがきっかけ。ただし今ではその選択を後悔している。聞きたくない喘ぎ声をずっと聞かされた私の心は襤褸布のように疲弊していた。
「あんっ…!てぇとくぅ!そこぉ…っ!」
「あ?ここか?」
「ちが…っ、」
喘ぎ声は今も続いている。こんな酷い浮気性なのになぜ別れないのか、と聞かれれば私は回答に詰まる。今まで長い間付き合っていた弊害か、浮気しましたといって簡単に捨てられるような軽い存在ではなくなっていたのだ。若いころの気の迷いと私は信じるしかなかった。
それに、今まで聞こえた喘ぎ声の中に帝督が女性に対して好きと言う声は聞こえたことがないが、私とセックスをする時は何回も好きと言っていた。馬鹿な女だと自分で理解しつつも、結局帝督に女性関係を指摘出来たことはなかった。
「てぇとくぅ…はっ、あんっ!私のこと、好きぃ…っ?」
女がそう、帝督に問いかけたのがやけにはっきりと聞こえた。私は帝督が答えないことを知っているのに、女が愛の言葉を求める時は毎回聞き耳を立ててしまう。ただ、今回の帝督はいつもと違った。
「……ああ、愛してるぜ」
その言葉を聞いた瞬間、私はぐらりとバランスを崩して頭を強く打ち付けた。意識が朦朧とし身体が固いフローリングの床に叩きつけられた。
—
ピッ―ピッ――
鼓膜を震わす耳障りな機械音に、私は目を開いた。私は病院のベッドに横たわり、無数に細やかな穴が開く天井を見つめる。何故だか私の中にもぽっかりと大きな穴が空いたように感じていた。
ドアノブが回り、外からひんやりとした肌寒い外気と共に、赤いスーツの男の人が入ってきた。色気を含んだ空気をまとわせたその人は、ベッドで見開く私を視界に入れると、瞳孔を開いて頬を赤らめながら私に抱き着いた。急な行動に思わず心臓が跳ねる。
「あなたは、だれですか?」
君の目が醒めたら
(いっそ愚者とあざ笑ってくれ)
