どこかに逃げないように脚を折った。自分以外何も見ないように目を抉った。自分を求めるように、快楽に溺れさせた。
必死だったんだ。逃げないでほしかった。自分を求めて欲しかった。何時からだろう。こんなにも好きになってしまったのは。どこから、自分はおかしくなってしまったのだろう。考えを巡らせてもその答えは永久に訪れないのだろう。同じタークスの一員として、彼女は優秀だった。いつも輝いていて、眩しいほどの笑顔を見せてくれた。そんな彼女を、他の男がいつまでも放っておくはずもなかったが、自分はいつまでも手を拱いているばかりだった。
オフィスに佇む彼女を見つけ声を掛けようとしたとき、目に入ったのは隣の白いスーツの男。刹那、何かが崩れ去った。俺の眼はまるで死人のように見開かれた。息が苦しい。目の前がぐるぐると回る。気持ち悪い。
「レノ?」
気付けば彼女は目前まで迫っていた。覗き込むようにして俺を映すその瞳に、目の奥、視神経を伝って脳まで見透かされているような感覚になった。俺は焦り、思わず目を明後日の方向に向けた。適当な口笛をひゅーと吹き、大丈夫と、明るい表情で名前に言った。そう、良かった、と花の綻ぶような笑顔を俺に向け立ち去ろうとしたその背中を引き止めた。
「ちょっと付き合ってくれよ、と」
「え、今?社長のところに伺わなきゃいけないんだけど」
「だいじょーぶだって」
強引に彼女の腕を引っ張り、ビルの外に連れ出した。抵抗しつつも大きな抵抗はしない。
「やさしすぎるな、と」
「ちょっとレノ?どこに行くの!」
レノは腕を引っ張り、耳元で、いーところ、と囁いた。突如顔を近付けられた彼女は驚き、離れようとしたがその腕はレノに固定されているため叶わなかった。
持っていた電磁ロッドで彼女を気絶させる。様々な使い方が出来る電磁ロッドはやはり自分に向いている、なんて思いながら倒れた彼女を家まで運んだ。そして自分のベッドに縛りつけ、口付けをした。激しい口付けに彼女は途中で目覚め、訳の分からない状況に困惑するばかりであった。
「いい加減に、ふ、んんっ…」
最後まで言葉を続けることも出来ず、レノに口を塞がれる。生理的な涙が頬を伝う。レノはそれを一瞥し、唇を寄せる。人道に反することをしているのにも関わらずその唇は優しく、真綿で包まれているようだった。
突然レノは口付けを止め、名前の瞳を見つめた。不可抗力的に名前はレノの美しいアイスブルーの瞳を見つめる。まるで硝子玉のように美しく、繊細なそれはどこか寂しそうな色を宿していた。
「レノ、もうやめて」
「だいすきだ。名前」
愛しい人を呼ぶように慈愛に満ちた囁きだった。そしてゆっくりと、ゆっくりと彼の指が私の瞳の前へ来る。どうすべきか分からず戸惑っていると、レノは指を静かに私の目の中に入れた。私は大きく悲鳴を上げた。そんな私にレノは猿轡を嵌めた。声になることを許されなかったそれは、涎に姿を変えて口から溢れた。
片目を抉られた女は、そのショックで気を失った。男は悲しげな視線を女に向け、そのまま手に持っていた女の目を口に含んだ。男は咀嚼しながら、泣いていた。どうして泣いているのか自分でも分かっていないのだろう。驚いたように目を見開いていた。
女が目を覚ますと当然のようにレノは隣で寝ていた。今がチャンスかもしれないと繋がれている手足の拘束を解く。想像以上に拘束は固く、時間がかかったが、何とか解くことが出来た。レノを起こさないように忍び足でドアまでの歩みを進める。一歩ずつ、静かに、起こさないように。
「名前?」
顔が強張る。女はもう少しだったドアまで一直線に駆け出した。しかし、流石にタークスのエース、レノ。スピードでは適うはずもなく、ドアに片手をつき、退路を断った。そしてレノは、やはり悲しい目をしながらまるで美しい華を手折るが如く、無駄の無い動作で私の脚を折った。鈍い音を立ててありえない方向に曲がる脚を見て女は失神した。男は気を失った女を気にすることはなく、そのまま口付ける。そして反応を示さない女の身体を撫で回す。赤みの差した頬、色気の漂う鎖骨、柔らかな胸、女にしては鍛えられた腹筋。濡れていない秘部にローションを塗る。少し元気を失ったソレで一息に女を突く。気を失った女の膣は大して締まるはずもなく、弛緩している。それなのに何故か男は興奮していた。突いている内に元気を失ったかのように見えたソレはいつの間にか太くそそり立っている。はあはあとレノの息遣いが響く。
「ああ、はあ!名前…!愛してるぞ、と…!」
突きながら女の乳頭を舐る。執拗な動きで繰り返される行為。レノは近くにあったナイフで女の身体に傷をつける。シーツは血だらけになり、浅い傷が女を覆いつくそうかというほどに増えていく。女を抱き締め、男は達した。男は暫くそのままの体勢でいたが、未だ硬度を失わない男の象徴を確認し、またピストンを開始した。腰を動かす度に揺れる乳房は余計に男を煽った。
いつまでそうしていただろうか。呻き声にも似た声を出し、ベッドに寝転がった。仰向けになり、隣にいる気を失った女を見て満足そうに微笑んだ。そして囁くのだ。
「これでお前は俺から離れられない、俺から逃げることは出来ないぞ、と」
別れを恐れたのでは遅すぎる 出会ってしまうことを恐れよ
